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Research

最新の研究内容の紹介は以下のleafletをご覧下さい

- 2015年度版(PNGPDF


 1995年,当時戦後最大の地震災害と言われた阪神・淡路大震災が発生しました.将来起きるとされる南海・東南海地震に向けて地震活動期に入ったと言われる西日本では,今後もこのような強い揺れをともなう地震が発生することを否定することはできません.そして,2011年東日本大震災.東日本の太平洋沿岸部で津波による甚大な被害が発生しました.地震の揺れによる被害は比較的目立ちませんでしたが,様々な形態の被害が東北地方から関東地方の内陸部で発生しています.今後,地震災害から人的・経済的な被害を軽減するためには,「なぜ被害が発生したのか?」といった被災原因の分析や,地震が発生してから構造物が被害を受けるまでの幅広いプロセスを理解した上で合理的な対策を講じることが必要です.

 耐震基礎研究分野では,地震災害における構造物の被害メカニズムを理解するために地震の発生から構造物の応答までの幅広い領域を対象とした研究を行い,さらに耐震化技術へ応用する技術についての研究を行っています.今回は,これらのうち代表的な研究・活動を紹介します.


地震動の発生・伝播メカニズムの研究

 地震時に私たちが感じる揺れは,地震が発生してから地中を波が伝播して足元の地盤を揺らすまで,長いプロセスを経たものです.このプロセスの間に様々な影響が受けることになるので,地震の揺れは,それぞれの地震,それぞれの場所によって異なる特徴を持ちます.この特徴が,構造物の被害に影響を与えます.本分野では,このような地震の発生メカニズムや地震動の伝播メカニズムを研究しています.構造物の耐震設計では,その地点,その構造物に対してどのような地震動を考慮するのが合理的であるか,を考える必要がありますが,このような設計実務にも本研究は反映されています.

 たとえば,地震は断層で岩盤が破壊して滑ることで発生しますが,その破壊の過程は非常に複雑です.構造物を大きく揺らす地震波は断層のごく一部の領域から放射されることが分かっています.下図(左)は2004年の新潟県中越地震では断層のどの領域からこのような地震波が放射されたかを,観測された地震波の記録から推定したものです.震度7を記録した川口町では,図上青線で囲った領域から放射された地震波が支配的であったのに対し,川口町以外の場所では図上赤線で囲った領域から放射された地震波だけで揺れをほぼ説明できることがわかりました.また,断層が破壊する現象を,動力学に基づいてシミュレーションを行う研究も行っています.下図(右)は,断層上で破壊が進展し,それに伴って地震波が放射される様子を解析した例です.黒直線で示した断層の深部(右下)から浅部(左上)に破壊が進むにしたがって,地表面と断層の間に地震波のエネルギーが集中し,断層浅部直上が大きな揺れとなることがわかります.

   

 また,地震波の伝播メカニズムに関する研究として,地盤構造の影響について着目したものが挙げられます.地盤が複雑に変化する地域では,地震時の地面の揺れ方が場所によって大きく変わる場合があります.2007年の能登半島地震では,石川県穴水町で複雑な地盤が地震の揺れ方に影響を与えた可能性があると言われていました.そこで,地盤の構造を調べるための小規模な探査システムを開発して,現地で調査を行いました(下図).二人程度の作業員で実施できるため低コストですが,地下20mまでの地盤構造の変化を詳細に抽出することができました.




構造物の耐震性能の研究

 地震の揺れに対して構造物がどのように揺れるのか,またどのような揺れに耐えることができるのかなどを把握するためには,コンクリートなど構造物を形作る基本的な材料の力学的な挙動や,柱や梁などの部材の動きについて分析すること,橋梁など構造物全体が構成するシステムの応答を知ることなど,小さな視点から大きな視点まで様々なスケールで構造物の動的特性を把握する必要があります.本分野では,実験や数値解析を利用して構造物の耐震性能の解明に取り組んでいます.また,通常の実験施設に収まらない大規模な全体構造システムの挙動を検討するために,小さな部位毎に実験や解析で取り扱うことができる手法であるハイブリッドシミュレーションの高度化に関する研究を行っています.

 部材の挙動に着目したものとしては,鉄筋コンクリートの内部にコンクリートとは未固着の芯材を追加して,耐震性能を向上させた新しい構造のコンクリート(UBRC:アンボンド芯材入り鉄筋コンクリート)柱の挙動について研究が挙げられます.最近では,UBRC構造がねじれに対してどのように効果を表わすかについて,静的実験に基づいて分析をしています.また,本構造が地震時にどのような動きをするかについて,防災研究所にある三次元振動台を用いて検討しています(下図(左)).この振動台は,大学機関が有する三次元で可動する振動台としては最大のものです.一方,兵庫県三木市にある防災科学技術研究所兵庫耐震研究センターには,世界最大の三次元震動台(通称E-ディフェンス)があります.これは震動台テーブル寸法が20×15m,最大搭載質量が1500トンという巨大な施設で,現在,実大規模(高さ7.5m,断面直径2m)のRC橋脚実験が進められています.このプロジェクトにも参画し,2008年度には1995年兵庫県南部地震で被災した橋脚をモデルとした実験を行い,柱中間部より大きな損傷が生じる破壊性状が再現することができました(下図(右)).

   


次世代耐震化技術の開発研究

 阪神・淡路大震災をはじめとする近年の地震災害の教訓を受けて,構造物がどの程度の地震の揺れに対して安全であるべきかというレベルは増加を続けています.従来の耐震化手法に基づいて対策を考えると,部材の断面を増やす,高強度の材料を使用するなど,建設コストが増加することになります.本分野では,今までにない新しい機構を研究・開発して,安価で高性能な耐震対策の実現を目指しています.

 2003年の十勝沖地震では,石油タンク内に蓄えられた可燃性の液体が大きく揺動したために火災が発生しました.このような揺動(スロッシング)現象を抑制するために,タンク内に遮閉板を設置する新しい機構を考案して研究しています.下図(左)は実験の様子ですが,その機構の効果とメカニズムについて実験と解析の両面から研究しています.また,下図(右)は,細い棒を多数束ねて一本の柱を構成する,新しい耐震機構を持つ柱の実験の様子です.柱は大きく変形してエネルギーを吸収するものの,構成する個々の棒が大きく変形しないので,繰り返して安定した挙動を示すことが特徴です.理論的に予測された特徴を実験で再現することに成功しました.

   


国際研究協力・研究交流

 地震災害に対する世界各地の対策は,地震がどの程度発生するか,構造物がどのような特徴をもっているかなど,地域毎の特色に応じてそれぞれ発展してきました.本分野では,各地域の地震災害が地域性を持った現象であることを認識しながらも,それぞれが抱える課題を互いに協力して解決を目指しています.

 一例として,台湾国立中央大学とは2006年から毎年2回,学生セミナーを通じて交流を進めています(下図).研究成果をお互いに紹介して共有することから始まりましたが,現在では新たな研究プロジェクトが動くまでの協力関係が構築されています.また学生にとっては,英語での研究発表や議論を通して英語に対する抵抗が和らぐだけではなく,国外の地震災害や研究に対する視野も広がっているようです.


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