第1版(2007年8月8日)

概要

 平成19年7月16日10時13分,新潟県中越沖を震源とするMj 6.8の地震が発生し,新潟県柏崎市西山町池浦,刈羽村割町新田,長野県飯綱町芋川の自治体観測点において震度6強が観測されている.中越地方には平成16年にも新潟県中越地震(Mj 6.8)が発生しており,大規模な地震が短期間に発生した事例となる.

 今回,土木学会平成19年新潟県中越沖地震緊急調査団(第2次)の一員として,家村浩和(京都大学大学院教授,土木学会第2次調査団団長),C. スコーソーン(京都大学大学院教授,ライフライン担当),岩田秀治(JR東海,鉄道担当),高橋良和(京都大学防災研究所准教授,橋梁担当)が平成19年8月1日より3日まで現地調査を行った.2日よりは後藤洋三(富士常葉大学環境防災研究所)と,3日はアメリカ土木学会(ASCE)調査団と共同で調査を実施した.

橋梁構造被害

 現地調査においては,柏崎市の鯖石川,鵜川沿い及び柏崎市西方の国道8号線沿いの橋梁を調査した.本地震では落橋に至るような大きな構造被害は無かったが,過去の地震に比べて特徴的な被害が見受けられた.

sabaishi 鯖石川沿いでは,比較的新しい設計による橋梁が被災したことが挙げられる(左図をクリックすると図が拡大).鯖石川水系では古くより度重なる水害が発生し,近年でも平成7年に2回,平成16年,17年にそれぞれ梅雨前線豪雨により床上浸水を含む浸水被害が発生している.そのため新潟県の河川改修事業と関連しながら,鯖石川を跨ぐ橋梁の架け替え工事が進められてきた.鯖石川河口より,安政橋(現在架け替え工事中),平成大橋(2000年3月竣工),開運橋(2001年8月竣工),名称不詳鉄道橋,なごみ橋(2004年3月竣工),豊田大橋(2004年5月竣工),上原一の橋(2005年3月竣工),上原二の橋(2004年3月竣工)が架けられているが,竣工年度を見ても分かるように兵庫県南部地震以降に改訂された道路橋示方書に準拠した橋梁がほとんどであり,これらの橋梁はゴム支承(反力分散)を有している.以下に各橋の調査結果について述べる.

豊田橋

toyota-brdg 本橋は国道8号線が鯖石川を跨ぐ地点にある橋梁であり,3径間連続鋼2主箱桁橋(延長150.5m,幅員8.75m)である.H14年の道路橋示方書が適用されている.左図は長岡国道事務所のホームページよりの豊田橋の概要図を改変したものであるが,鯖石川を拡幅し,かつ柏崎バイパスと接続するよう,旧橋に比べ延長が長くなり,曲線橋となっている.橋台および橋脚上で2基のRB支承により上部構造が支持されている.曲線橋であるため,橋台上は橋軸直角方向は拘束されているが,橋脚上では橋軸・橋軸直角方向ともにフリーである.

 現地調査の結果,A1, A2両方の橋台が河川側に移動しており,フィンガージョイントがほぼ遊間がなくなっている状態であった.かつこの橋台の移動(沈下)に起因すると考えられるが,橋台上のみならず橋脚上のRB支承も残留変形している状態となっていた. A2上の支承は約170mmほど変形しており,鋼板を含む支承高さは約 300mmであることからせん断ひずみで約100%程度の残留変形していることが予想される.他の橋台,橋脚の残留変形状態を図化したものが下図である.

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A1橋台の変形と他の橋台,橋脚の変形方向は逆であり,さらにP1, P2橋脚では橋軸直角方向にも変形していた. 下に左よりA1側のフィンガージョイント,A2側のフィンガージョイント,A2支承の橋軸方向変形,P2支承の橋軸直角方向変形を示す.

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なごみ橋

nagomi-brdg 本橋は3径間連続5主I桁橋(延長102.5m,幅員12m)であり,各橋脚,橋台上で5基のRB支承で上部構造が支持されている.支承高さは橋台上が約180mm,橋脚上が約150mmであり,橋台上は橋軸直角方向が拘束,橋脚上は特に拘束されていない.本橋も河川拡幅のために旧橋に比べて延長が約2倍となった.

 本橋の被害も豊田橋と同様,橋台が河川側に沈下することにより(下写真のフィンガージョイント遊間参照)橋台の支承が逆方向に変形しており,橋台上で約150mm程度の残留変形が残っている.支承高さを考えると,せん断ひずみで約150%程度もの変形をしていると考えられる(下写真).また橋脚上での支承も変形しているものの,橋軸方向に40mm程度であった.しかし上部構造の中間対傾構および下横構が座屈するなどの被害があった(下写真).この被害箇所の支承はそれほど大きな変形をしていないので,被害の原因が橋脚の橋台の移動により桁の両端が拘束されたためによるものか,検討が必要である.

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開運橋

kaiun-brdg 本橋は4径間連続4主I桁橋(延長111.2m,幅員12m)であり,各橋脚,橋台上で4基のRB支承で上部構造が支持されている.橋脚上の支承拘束条件は確認できていないが,橋台上の支承は橋軸直角方向に拘束されている.本橋も鯖石川改修工事に伴い,県と市の合併施工で架け替えられたものである.1996年の道路橋示方書に準拠して設計・施工されている.

 現地調査の結果,他の橋梁被害と同様,橋台が沈下して河川側に移動したこと方向にゴム支承が橋軸方向に残留変形が残っているが,他の橋梁と異なることは,橋台が沈下してフィンガージョイント部に段差は確認できるものの,フィンガージョイントの遊間が閉じていないことである.これより桁の振動によって支承が変形した可能性もある.また本橋は橋軸直角方向側にも桁(あるいは橋台)が移動したことに伴い橋軸直角方向ストッパーに衝突,取り付けボルトが伸び出すことによる残留変形が残っていた.橋台上の支承(支承高さ約180mm)は橋軸方向残留変形が約60mmであった.

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上原一の橋

uehara1-brdg 本橋は3径間連続非合成鈑桁橋(延長100.0m,幅員7.0m)であり,下部構造は逆T式橋台(高さ8.0m,7.5m),壁式橋脚(高さ11.8m)である.下部構造は1996年道路橋示方書,上部構造は2002年道路橋示方書に準拠して設計・施工されている. 3つのRB支承により上部構造が支持されている.支承は橋台および橋脚上すべて橋軸直角方向は拘束されている.本橋は鯖石川と別山川が合流する地点に建設されており,次に示す上原二の橋と対となり,鯖石川を跨いでいる.

 本橋も橋台が河川側に移動することにより桁両側のフィンガージョイントの遊間はほぼ閉じていた.これに伴い橋台上の支承は橋軸方向に約100mm程度残留変形している(支承高さは約200mm).橋脚上の支承も変形しているが,橋軸方向の可動量も制限されており,可動範囲まで桁が移動していることが確認できた.

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上原二の橋

kamihara2-brdg 本橋は2径間連続非合成鈑桁橋(延長65.0m,幅員7.0m)であり,下部構造は逆T式橋台(高さ7.5m,8.0m),壁式橋脚(高さ11.6m)である.下部構造は1996年道路橋示方書,上部構造は2002年道路橋示方書に準拠して設計・施工されている. 3つのRB支承により上部構造が支持されている.支承は橋台および橋脚上すべて橋軸直角方向は拘束されている.本橋は鯖石川と別山川が合流する地点に建設されており,先に示した上原一の橋と対となり,別山川を跨いでいる.

 本橋も橋台が河川側に移動することにより桁両側のフィンガージョイントの遊間はほぼ閉じていた.これに伴い橋台上の支承は橋軸方向に約100mm程度残留変形している(支承高さは約140mm).またフィンガージョイント上部の高欄と橋台とが衝突した痕跡も確認できた.

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ゴム支承を有する橋梁の橋台被害から得られる教訓

 橋台部の被害は本地震に関わらず被害が多い箇所であるが,ゴム支承を有する橋梁で橋台部が河川側に落ち,遊間が無くなっている特徴があった.調査は地震発生から約2週間後であったが,橋台部が簡易復旧され,橋梁は制限はあるものの全て供用されていた.機能不全に至る被害が無かったことは幸いであるが,このような被害が今後の耐震設計に与える教訓は大きいものがある.

・桁遊間が閉じることにより支承部に残留変形が残り,さらに両橋台部で逆向きに支承が変形するため,ゴム支承の変形を元に戻すためには橋台部の移動あるいは支承の取り付け位置の変更などの復旧工事が必要となること.

・反力分散型支承の使用による桁の連続化により,設計振動単位が複雑なものとなっているが,桁遊間が閉じられることにより設計時に考えていた振動単位が変化すること.免震支承を採用していた場合には桁の振動(支承の変形)によるエネルギー吸収性能が期待されるが,遊間が閉じることで期待した耐震性能が発揮することができず,想定していない挙動を示す可能性があること.

・遊間が閉じることにより,温度応力の解放が困難となること.連続桁の場合にはさらにその影響は大きくなる.

ukai 鵜川沿いにも多くの橋梁が架設されているが,橋梁の建設年代は鯖石川と比べて古い.河口側より,臨港八坂橋(1981年10月),八坂橋(1984年7月),鵜川橋(1983年2月),大洲橋(1983年3月)を調査した(左図をクリックすると拡大図). 臨海八坂橋,鵜川橋,大洲橋は2径間単純PC桁橋であり,フレシネー工法により定着されている橋梁である.八坂橋は2径間単純鋼I桁橋である.

 鵜川沿いの橋梁でも主な被害は下に示すように橋台部の損傷,沈下であった(左より臨海八坂橋(補修済),八坂橋,大洲橋).ただし橋台部の損傷に伴う支承部の被害は特に見受けられなかった.鵜川沿いの橋梁の中で,鵜川橋では特に橋台部の損傷は見受けられなかった.以下に調査概要を示す.

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鵜川橋

 本橋梁は2径間単純PC桁橋で両橋台部に高低差がある橋梁である.鯖石川流域や鵜川流域の橋梁の多くで橋台部周辺の被害が多く見られたが,他の橋梁に比べても鵜川橋は高低差があるため,より大きな橋台部の被害が予想された.しかし調査結果では橋台部そのものには被害は見受けられず,フィンガージョイントの遊間にも特に変化は見られなかった.

 設計条件が不明のため断定はできないものの,本橋は常時でも橋台部に力が作用するため,水平な橋梁に比べて橋台部が十分な対策がなされていたことが予想される.つまり周辺の地盤条件にもよるが,働く力を適切に考慮すれば地震時にも変形しない橋台を作ることは可能であり,特にゴム系支承を有する橋梁の橋台を注意して設計することの重要性が指摘できる.

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国道8号線を柏崎から西に走った米山町近くの上輪において払川を跨ぐ箇所に上輪大橋(上路鋼トラス橋)および胞姫橋(下路アーチ橋)がある.上輪大橋は特に被害はないようであったが,胞姫橋はアーチ....

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(文責:高橋)