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Earthquake

平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震の被害調査報告(速報)update 2008年6月16日

続報は別途公開しています(→ Earthquake).

下記は速報ですので,修正以外の更新は致しませんのでご了解下さい.


日程:2008 年6月14日〜16日

メンバー: 後藤浩之(京都大学防災研究所), 山田真澄(京都大学防災研究所),福島康宏(日本技術開発)

調査目的

1.強震動観測点の設置状況の確認と,地震を受けた周辺地盤状況の確認.

2.到達範囲に見られる典型的(広域的)現象と局所的現象との分離


リンク

山田真澄助教による報告(地震防災研究部門 地震被害調査報告

福島康宏氏による報告(日本技術開発 地震被害調査報告


被害調査報告(整理中)

・大崎市古川(6/14)

大崎市役所付近に目視の限り構造物被害はみられない.大崎市古川の気象庁観測点は,古川三日町の公園内に位置している.観測小屋周りの 地盤など,地震 動により乱れた形跡は見られなかった.


K-NETのMYG006(古川)観測点は,消防署の敷地に位置する.先の気象庁観測点から1km程度しか離れていない.目視した限 り,周囲に構造物被害はみられない.観測小屋周りは,地震動により乱れた形跡は見られなかった.


・奥州市衣川(以下,6/15)

奥州市衣川の震度計では震度6強が観測された.衣川支所の西側面の法肩に自治体震度計が位置している.震度計周りの 地盤など,地震 動により乱れた形跡は見られなかった.


衣川支所付近の山村開発センターでは,瓦の落下が見られた.センター北面に径1m程の窪みが発生しており,液体状の物体が窪んだ部分を 覆っている.埋め戻し砂の液状化によるものではないかと,現段階では予想している.ただし,ここのみに発生した理由は不明.


衣川よりやや東にある墓地では,回転の見られる墓石があった.ただし,転倒数は0.


・国道397号

国道397号を水沢から西に入ると,胆沢ダムの学習館以西は通行止めのため進入不可であった.通行止め部の小規模な橋梁の取り付け部 で,盛土が一方向にのみはらみだした(変形した)ため,路面に横ずれのような変形跡が残されている.


国道397号沿いの胆沢愛宕小学校.屋根の取り付け部からコンクリート片(30ほど)が複数落下していた.ただし,基礎部周辺の地盤変 状は目視では確認出来ないレベルであった.



国道397号と県道37号の合流部,盛土部のはらみだしによるものと考えられる亀裂が県道37号側に確認した.盛土が東方向にはらみだ したためと考えられる.



・奥州市水沢

K-NETのIWT011(水沢)観測点は,図書館敷地内の南西に位置する.観測小屋周りは,地震動により乱れた形跡は見られなかっ た.また,気象庁の水沢観測点は,消防署敷地内の東面に位置する.K-NET同様に観測小屋周りは,地震動により乱れた形跡は見られなかっ た.



・一関市

K-NETのIWT010(一関)観測点は,消防署敷地内の南西に位置する.観測小屋周りは,地震動により乱れた形跡は見られなかっ た.小屋の傍に積まれた物が崩れた形跡はみられない.



国道342号は矢櫃ダム付近でそれ以上西向きに進入不可,すなわちKiK-net IWTH25(一関西)観測点には到達できない.



KiK-net IWTH26(一関東)観測点は国道342号沿いの公民館(旧小学校)の敷地内に設置されている.観測小屋の北東面に4〜5mの落差がある.



・栗原市栗駒

栗原市栗駒の気象庁震度計はみちのく伝創館の駐車場南側に設置されている.周辺で下水道管の破裂による水漏れで,砂が出ている.


栗駒の東側に位置する金剛寺では,石燈篭・墓石に東西方向の倒壊・ずれが発生していた.墓石に芯棒の入ったものも転倒していた.また, 鐘楼台の積み石に互いにこすれたことによる摩耗がみられた.傍の擁壁の積み石には見られなかったことから,鐘楼による上載圧により摩擦力が働いたものと考 えられる.


・荒砥沢ダム

荒砥沢ダムの管理事務所に続く道に,圧縮による路面の変状が見られた.管理事務所からは,ダム湖に進入する崩壊した土砂が見られた.事 務所付近は高台になっており,南東方向に地盤が変形したために10cmほどの開きが発生している.


・大崎市鳴子(以下,6/16)

K-NETのMYG005(鳴子)観測点は,鬼首山学校(旧鬼首中学校)の敷地南東隅に位置する.学校などの中心部は,小高い丘に位置 する.観測小屋周りは,地震動により乱れた形跡は見られなかっ た.



大崎市鳴子の鬼首(おにこうべ)の(寒湯)ぬるゆ地区では,地盤の陥没がみられた.径10mほどの陥没と,径5mほどの地盤沈下が発生 している.陥没の上流側では澄んでいる水が,下流側では白濁している.牛小屋の下部は地盤が沈下し,基礎が浮いた状態になっている.

証言によると径5mの陥没は,平成8年の鬼首地震で規模はやや小さいながらも発生しており,埋め戻しをしたとのこと.径10mの陥没と 牛小屋の下部地盤は今回が初めて.また,証言のみだが,平成8年の地震では,自動車一台と電柱が沈んで隠れたことを伺った.


謝辞: 本報告では,気象庁の震度情報,防災科学技術研究所のK-net,KiK-netの観測記録を参照させていただきました.当データは地震直後より公開され て いたため,被害調査を行う上での基礎情報として非常に有用でした.浅野公之助教(京都大学),新井洋博士(建築研究所),市村強准教授(東京工業大学), 岩田知孝 教授(京都大学),片岡俊一准教授(弘前大学),澤田純男教授(京都大学), 森井雄史助教(京都大学),盛川仁准教授(東京工業大 学), 吉田望教授(東北学院大学),吉見雅行博士(産総研)他多くの方々に本調査の 遂行にあたり多くの情報,配慮を頂きました.記して感謝致します.また,現地にてお忙しい中情報を提供いただきました方々に感謝を申し上げると同時に, 被災地の1日でも早い復興をお祈り申し上げます.


文責 後 藤浩之京都大学防災研究所

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